1. 書籍情報
タイトル: 錯乱のニューヨーク
著者: レム・コールハース(訳:鈴木圭介)
出版社: 筑摩書房(ちくま学芸文庫)
出版年: 文庫版は2008年(原著は1978年)
2. 評価概要
アーキフロムのレビュー
難易度
(3.5)
見やすさ
(3.5)
面白さ
(3)
総合評価
(1.5)
対象読者: 建築・都市計画に関心がある中級~上級者、ポストモダン思想への興味がある読者
学習目的: 都市の歴史的・文化的分析、建築理論の深化
主なテーマ:
ニューヨーク、特にマンハッタンの都市開発史を「錯乱」というキーワードで再解釈。摩天楼やグリッド計画の誕生、資本主義と建築の関係性を批判的に考察。
構成:
- 第1部:19世紀の「コンゴラス・シティ」構想から摩天楼の誕生まで。
- 第2部:ロックフェラー・センターやConey Islandなど具体例を通じた都市の変容分析。
- 第3部:都市の密度と断片化が生む創造性の可能性。
特徴:
- 建築を単なる技術やデザインではなく、政治・経済・文化が交錯する「物語」として描く。
- 写真や図版を多用せず、テキスト中心で理論的深化を追求(他書との大きな違い)。
4. 良かった点
分かりやすさ:
専門用語は多いが、比喩やストーリーテリングで抽象概念を具体化(例:「摩天楼は資本主義の聖堂」)。
実用性:
都市計画の実務より「発想の転換」を促す一冊。クリエイティブな視点を養える。
デザイン:
学芸文庫版はコンパクトで携帯しやすいが、原著の図版は一部縮小され見づらい点も。
5. 改善点
内容の深さ:
建築未経験者には難解。訳注や補足が少ないため、歴史的背景の知識が必要。
最新情報の反映:
原著から40年以上経過。現代のニューヨークやデジタル化する都市への言及はない。
価格:
文庫版は1,500円前後と学術書としては手頃だが、図版の質を考えるとやや割高感。
6. 総評
おすすめ度:
✅ 建築学生や都市計画者には必読書。
⚠️ 初心者は事前に『アメリカ大都市の死と生』(ジェイン・ジェイコブズ)で基礎を学ぶと効果的。
他の参考書との比較:
- 『Delirious Tokyo』(伊東豊雄)との対比で読むと、アジアと欧米の都市観の違いが際立つ。
- 理論書として『建築の多様性と対立性』(ロバート・ヴェンチューリ)と並ぶポストモダン建築の古典。
学習後の成果:
- 都市を「完璧な計画」ではなく「矛盾の蓄積」として捉える視点を獲得。
- 現実の建築物(例:コールハース設計のCCTV本部)の背後にある思想を理解できるようになる。
総括
「都市とは未完の実験である」というメッセージが全編に貫かれた一冊。難解さはあるが、建築を社会批評として読む新たな地平を開いた名著。学術的に価値が高く、繰り返し読むごとに発見がある。