シングル折板とダブル折板の違い

折板とは、薄い金属板を一定のピッチで折り曲げ、波形状(山と谷)に成形した屋根材・床材のことです。

シングル折板・ダブル折板は、その折り曲げのパターンや構成によって分類され、建築の屋根や床の軽量化、高い荷重支持性能を得るために活用されています。

シングル折板は単独の山谷形状を持つ折板を一枚で成形したもので、ダブル折板は2層の折板を重ね合わせたり間に空気層や断熱材を設けるなどの方法で断面を複雑化し、剛性・断熱性などを向上させたものを指します。

本記事では、両者の構成や特性、使い分けなどを体系的に解説します。

シングル折板とは

シングル折板は一枚の薄鋼板をロール成形機で成形し、山谷が交互に連続する形状となったものを言います。これが単体で屋根・床材として機能し、比較的軽量で施工性もよく、産業用建物(工場・倉庫など)の屋根や大型施設の仮設床などで多用されます。

  • 構成
    • 単層の鋼板のみ
    • 各山部には補強リブを設ける場合もある
    • 防水・断熱面では、別途シートや断熱材が必要になる場合が多い
  • メリット
    • ロール成形で大量生産しやすく、コストも低め
    • 軽量かつ施工がスピーディ
    • 部材形状がシンプルで小規模~大規模建物に広く適用可
  • デメリット
    • 単層だけだと断熱性能がほぼない
    • 防音性能も低く、雨音・騒音が発生しやすい
    • 剛性や耐荷力を強化したい場合は厚板化や補剛が必要

ダブル折板とは

ダブル折板は、シングル折板を2層重ね合わせたり、折板同士の間に空間や断熱材を挟み込むなどして複合化した折板システムです。

単層では対応が難しい大スパン化や、高い断熱・防音・剛性要件に応えるために開発されました。

  • 構成
    • 上下2層の折板を間隔をあけて配置
    • 中間に断熱材や吸音材を充填する場合あり
    • 上下折板の山谷が連動して重量支持・剛性確保
  • メリット
    • シングル折板比で大スパン対応や高荷重対応可能
    • 断熱材併用で高断熱・防音性向上
    • 屋根裏の結露対策や省エネ効果が期待できる
  • デメリット
    • 製品コスト・施工費がシングル折板より高くなる
    • 構造が複雑化し、施工精度管理が難しい
    • 板厚・材料選定が不適切だと重量・コスト面で不利

シングル折板とダブル折板の比較表

項目シングル折板ダブル折板
板構成単層の鋼板2層の鋼板(間に断熱材など挟み複合化)
剛性・耐荷力中程度大スパン・高荷重に対応しやすい
断熱・防音性能ほぼ無し(別途断熱材要)内部に断熱材や空気層で性能アップ
コスト低〜中(材料と施工がシンプル)やや高〜高(複雑構成で材料費・工数増)
主な用途倉庫・工場・低断熱要求の屋根大型施設、高断熱・大スパンの屋根

適用例と使い分け

  1. 低~中規模工場・倉庫
    • コストを重視し、断熱性をそこまで求めない→シングル折板
    • 軽量・施工性がよく、短工期で屋根を仕上げられます。
  2. ショッピングモール・体育館など
    • 広いスパン・空調負荷削減・防音を重視→ダブル折板
    • 断熱材を挟んで冷暖房効率アップ、騒音対策にもなる。
  3. 住宅ガレージ・農業用倉庫
    • 予算に余裕がなく、内部環境制御の必要性が低ければシングル折板
    • 温度管理が必要で結露リスクが高い場合はダブル折板を検討

設計上のポイント

  1. スパンと許容荷重:シングル折板は中小スパン向き、ダブル折板は大スパン・高荷重要求にも対応可能。
  2. 断熱・防音要件:室内空調・防音性能が求められる場合、ダブル折板が有利。シングル折板なら、別に断熱下地や防音材を追加検討。
  3. 雨仕舞い・結露対策:ダブル折板は内部空気層で結露抑制しやすい。一方、シングル折板は裏面結露防止シート貼りなど検討を要する。

施工とメンテナンス

  • 施工
    • シングル折板はロール成形材を順次重ね固定。山と谷の噛み合わせやシーリングなど防水処理を丁寧に行う
    • ダブル折板は上下2枚を組み合わせるため、更に精度管理と丁寧な仮設計画が必要。断熱材挿入時のズレ・浮きに注意。
  • メンテナンス
    • 塗膜・シーリング劣化の点検を定期的に。特に屋根上で踏み抜きなど傷を付けないよう養生
    • ダブル折板は内部の吸湿や断熱材劣化を点検するのが難しいため、結露センサーや内部点検口など導入検討

メリットとデメリットまとめ

シングル折板

  • メリット:施工が簡単、コスト安、軽量
  • デメリット:断熱性能は無し、スパン・荷重に限界がある

ダブル折板

  • メリット:高い断熱・防音、大スパン対応
  • デメリット:コスト・施工難度高、やや重量増

今後の展望

軽量かつ高強度の金属素材や断熱材が増加し、シングル折板・ダブル折板の性能も進化が期待されます。

さらに、BIMや3D施工シミュレーションで折板形状の最適化・施工計画が精緻化し、施工ミス削減や性能アップが見込まれます。建築の省エネ・環境意識が高まる中、ダブル折板の断熱効果や防音特性はますます注目されるでしょう。

一方、低コスト・短工期を求めるシーンではシングル折板が依然として活躍すると考えられます。

Q&A

Q: シングル折板に断熱性能を足す方法はありますか?
A: 内側に断熱材を貼り付けたり、防露フィルムを貼るなど工夫が可能です。ただしダブル折板の性能には及びにくいです。

Q: ダブル折板はどうして断熱性能が高いのですか?
A: 中間層に断熱材や空気層を設けることで熱伝導を抑え、音も通りにくくなり、防音効果も兼ね備えます。

Q: 大スパンの屋根でシングル折板を使うと問題ありますか?
A: 折板自体の剛性が不足しやすく、たわみや変形が大きくなる懸念があります。ダブル折板または補強リブ等を検討するとよいでしょう。

Q: メンテナンス頻度はシングルとダブルで変わりますか?
A: ダブル折板は内部確認が難しく、施工品質や仕上げ精度が高いと長寿命化可能です。シングルも塗膜劣化には注意が要り、点検は両者とも定期的に実施すべきです

まとめ


シングル折板ダブル折板は、屋根・床材に用いられる折板構造の種類で、シングル折板は軽量・コスト面に優れ、ダブル折板は断熱や大スパン対応など高性能を実現します。

建物用途・規模・断熱防音要求に応じて、適切な折板システムを選べば、施工性と性能を両立可能です。今後も材料技術・施工システムの進歩で、折板構造は建築界で幅広く活用され続けるでしょう。