スタッドジベル(Stud Shear Connector)は、鉄骨構造とコンクリートスラブを一体化するために用いられるせん断力伝達部材です。主に合成梁(Composite Beam)や合成スラブ(Composite Slab)の設計で使用され、コンクリートと鋼材間の滑りを防ぎ、両者が一体となって荷重を分担する構造を形成します。
スタッドジベルの構造と特性
- 形状
- スタッドジベルは、円柱形のボルトにフランジ状の頭部が付いた形状をしており、鉄骨上に溶接されます。
- 頭部がコンクリートに引っかかることで、せん断力を効果的に伝達します。
- 材質
- 一般的には高強度鋼材が使用され、必要な引張強度やせん断強度を持っています。
- 施工方法
- スタッド溶接機を使用して鉄骨上に直接溶接する方法が主流で、高い施工効率を実現します。
スタッドジベルの機能
- せん断力の伝達
- スタッドジベルは、鉄骨とコンクリート間のせん断力を確実に伝達し、合成構造としての一体性を保ちます。
- 滑り防止
- スタッドジベルが滑りを防ぐことで、鉄骨とコンクリートが同時に荷重を分担します。
- 構造剛性の向上
- 鉄骨とコンクリートの一体化により、構造の剛性と強度が向上します。
- 耐震性の向上
- 水平力に対しても効果的に抵抗し、建物全体の耐震性能を高めます。
スタッドジベルの設計基準
スタッドジベルの設計は、建築基準法や各種設計規準(例:JIS、AIJ設計指針)に基づいて行われます。
設計時のポイント
- せん断力の計算
- 設計荷重に基づいて、必要なスタッドジベルのせん断強度を算出します。
- スタッドジベルの本数
- 必要なせん断強度に応じてスタッドジベルの本数を決定。
- 通常、鉄骨上に一定の間隔で配置します(例:300mm〜500mm間隔)。
- 配置の考慮
- スラブや梁のリブ形状を考慮し、効率的にせん断力を伝達する配置を設計。
- 溶接強度の確認
- スタッドジベルの溶接部が設計強度を確保できるよう、溶接条件を厳密に管理。
スタッドジベルのメリット
- 施工性の高さ
- スタッド溶接機を使用することで、迅速かつ精度の高い施工が可能。
- 鉄骨上に直接取り付けられるため、追加作業が最小限。
- コストパフォーマンス
- 鉄骨とコンクリートを合成構造にすることで、梁の断面を小さくでき、全体的なコスト削減が可能。
- 構造性能の向上
- 合成構造による高い剛性と強度が得られ、大スパンや高荷重構造に対応可能。
スタッドジベルのデメリット
- 施工精度への依存
- スタッド溶接には一定の技術が求められ、施工ミスが構造性能に影響を与える可能性がある。
- 溶接部の品質管理
- 溶接部に欠陥があると、せん断力を適切に伝達できないリスクがあるため、非破壊検査や現場試験が必要。
- コンクリート打設時の注意
- スタッドジベルが正しくコンクリートに埋め込まれるよう、施工時の管理が重要。
スタッドジベルの用途
- 合成梁(Composite Beam)
- 鉄骨梁とスラブを一体化して、荷重を分担しながら剛性を向上。
- 合成スラブ(Composite Slab)
- デッキプレートとコンクリートの接合部に使用し、一体化した床構造を実現。
- 橋梁構造
- 鉄骨とコンクリートの合成構造で、大スパンの橋梁に使用。
設計例
- 例: 1mあたりに必要なスタッドジベルの本数を算定する
- 設計せん断力: 100 kN
- スタッドジベル1本あたりの許容せん断力: 20 kN
- 必要本数: 10020=520100=5 本/m
- 配置間隔: 1000 mm5 本=200 mm5本1000mm=200mm
まとめ
スタッドジベルは、鉄骨構造とコンクリートを一体化するための重要な部材であり、せん断力の伝達、構造剛性の向上、耐震性の確保など、多くの利点を提供します。
ただし、設計時の計算や施工時の品質管理が構造性能に大きく影響するため、正確な設計と厳密な施工管理が求められます。