合成スラブとは?特徴・構成・設計例を解説!

合成スラブ(Composite Slab)は、主に鉄骨構造で使用される床構造の一種で、鋼材とコンクリートを組み合わせたスラブ構造です。鉄骨フレームの上にデッキプレート(薄い鋼板)を敷き、その上にコンクリートを打設することで、強度と軽量性、施工性を両立した床構造を実現します。


合成スラブの構造要素

  1. デッキプレート
    • 波形またはリブ形状を持つ鋼板で、主に型枠として機能します。施工中にコンクリートを支える役割を果たします。
    • 一部のデッキプレートは、完成後にコンクリートと一体化し、引張力を負担します(構造型デッキプレート)。
  2. コンクリート
    • 圧縮力を負担する主要な構造材。
    • 硬化後、スラブ全体の剛性や耐久性を確保します。
  3. せん断接合材(スタッドジベル)
    • デッキプレートとコンクリートを一体化させるための部材。
    • デッキプレート表面のリブ形状やスタッドジベルがせん断力を伝達します。

合成スラブの特徴

メリット

  1. 施工性の向上
    • デッキプレートが型枠として機能するため、木製型枠が不要。
    • プレートが床作業の足場にもなり、安全性が向上。
    • 工期短縮が可能で、経済性に優れる。
  2. 軽量化
    • コンクリートスラブに比べて軽量で、建物全体の自重を軽減。
    • 支持構造の負担が減り、柱や梁の断面を小さくできる。
  3. 高い剛性と強度
    • コンクリートとデッキプレートの合成効果で、剛性が向上。
    • 耐荷性能が高く、大スパン設計に適している。
  4. 一体化による耐震性向上
    • 鉄骨構造との一体化により、地震時の水平力に対する剛性が向上。

デメリット

  1. 防錆処理が必要
    • デッキプレートの鋼板が腐食しないように、適切な防錆処理が求められる。
  2. 振動特性の検討が必要
    • 軽量な構造のため、人の歩行や機械の振動が問題となる場合がある。
  3. 遮音性能の課題
    • コンクリートスラブと比べて遮音性能が劣る場合がある。

合成スラブの種類

  1. 構造型デッキスラブ
    • デッキプレートが型枠兼補強材として機能。
    • デッキプレート自体が引張力を負担。
  2. 型枠型デッキスラブ
    • デッキプレートは施工時の型枠としてのみ機能し、完成後は構造には寄与しない。
  3. 厚型デッキスラブ
    • コンクリートの厚みが厚く、荷重に対する耐久性を向上させたタイプ。

設計上のポイント

  1. デッキプレートの選定
    • 波形やリブ形状、材質を荷重条件に応じて選定。
    • 製品の規格や荷重特性を確認。
  2. コンクリートの品質管理
    • 設計時に必要な圧縮強度と耐久性を満たすよう、適切な混合比を選定。
  3. せん断力の伝達
    • スタッドジベルやリブ形状が、コンクリートとデッキプレートを確実に接合する設計が必要。
  4. 振動の検討
    • 人の歩行による床振動や機械振動を考慮し、剛性を適切に確保。
  5. 防錆処理
    • 鋼製デッキプレートは腐食対策が必要。亜鉛メッキなどの防錆処理を行う。

用途

  • 商業施設
    広い空間を効率的に設計する必要があるショッピングモールや展示場。
  • オフィスビル
    軽量で施工性が良く、振動対策が施された設計に適用。
  • 倉庫・工場
    高荷重対応が可能で、耐久性のある床構造を提供。
  • 住宅建築
    マンションや集合住宅の床構造として採用される場合もある。

合成スラブの設計例

基本設計手順

  1. 想定荷重(静的荷重、動的荷重)を計算。
  2. コンクリート厚さとデッキプレートの仕様を決定。
  3. スタッドジベルやリブ形状によるせん断力伝達を設計。
  4. 防錆処理と耐久性の確認。

まとめ

合成スラブは、軽量化・施工性向上・経済性を追求した現代の建築構造に適したスラブ形式です。デッキプレートとコンクリートを一体化することで、高い強度と剛性を実現します。

設計時には荷重条件や防錆処理、振動対策を十分に検討する必要がありますが、適切な計画を行えば多用途に活用可能な効率的な構造です。