建築におけるスラブとは?定義、種類、施工のポイントを解説

スラブは、建物の床や屋根を構成する平面状の構造部材を指します。

鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造など多様な工法で用いられ、建物の耐荷性や遮音性、耐火性などにも深く関わっています。

とくに日本のように地震が多い地域では、強度と剛性をしっかり確保しつつ、建築計画や施工方法との整合を図ることが大切です。スラブの種類や特徴、施工上のポイントを押さえることで、快適かつ安全な建物を実現できます。

スラブの主な種類

  1. 鉄筋コンクリートスラブ(RCスラブ)
    もっとも一般的なスラブ形式で、コンクリートに鉄筋を組み合わせた構造です。構造剛性が高く、耐火性や遮音性にも優れています。一方で、重量があるため、支える梁や柱の断面を大きくする必要がある場合があります。
  2. 合成スラブ(デッキスラブ)
    鉄骨造において、鋼製デッキプレートの上にコンクリートを流し込む工法です。デッキが型枠代わりとなるため施工性に優れ、軽量化が図れる特徴があります。大規模な倉庫や工場、集合住宅でも多用されます。
  3. プレキャストスラブ(PCスラブ)
    工場であらかじめ製作したコンクリートスラブ(プレキャスト部材)を現場で組み立てる方式です。品質が安定し、施工期間を短縮できる利点があります。ただし、運搬やクレーンでの据付に対応できる寸法や重量に制限があります。
  4. ワッフルスラブ(リブスラブ)
    スラブ下面に格子状のリブ(梁状の突起)を設けることで剛性を高め、スラブ厚を抑える工夫をしています。大スパンを実現しやすい反面、型枠の形状が複雑になり施工コストが増すことがあります。
  5. 二重床スラブ(置き床工法含む)
    スラブの上にさらにフロアを浮かせる形で設置し、配線や配管を通せる空間を確保する工法です。遮音性や保守性に優れ、設備更新が容易になりますが、スラブ自体を支える構造計画と合わせた設計が必要です。

スラブの比較表

種類特徴メリットデメリット
RCスラブ鉄筋とコンクリートを一体化剛性・耐久性が高い、耐火・遮音性能に優れる重量があり梁や柱への負担が増す
デッキスラブ鋼製デッキとコンクリートの合成工法型枠不要で施工性が良好、軽量化が可能大スパンに対応しにくい場合がある、腐食対策が必要
PCスラブプレキャストコンクリートを現場組み立て品質が安定、工期短縮移送・据付設備が必要、寸法や重量に制限が生じる
ワッフルスラブ格子状リブにより剛性を高めながらスラブ厚を抑える大スパンに対応しやすい、材料削減が可能型枠が複雑で施工コストが高い
二重床スラブスラブ上にさらに床を設置し配管スペースを確保遮音性が高く、設備更新が容易床が厚くなりがちで、建物高さやコストに影響

スラブ設計と施工のポイント

  1. 荷重とスパンの検討
    荷重や積載荷重、さらには機械設備などの特殊荷重を想定して設計します。スパンが大きいほどスラブのたわみが増加しやすいため、スラブ厚や補強筋、リブ形状を適切に設定しなければなりません。
  2. 配筋計画
    RCスラブの場合、上下方向に鉄筋を配置します。曲げモーメントが大きくなる中央部や支点部など、応力に応じて鉄筋量を変化させる必要があります。また、ひび割れ対策として温度補強筋も検討します。
  3. 防水・防音対策
    住宅やオフィスビルでは、上階からの生活音や振動を抑えるため、スラブの厚さや二重床工法などで対策を講じます。屋上スラブでは防水層との取り合いが重要になり、排水計画やドレーン位置も明確にします。
  4. 型枠と養生
    コンクリートを流し込むための型枠を正確に組み、打設後の養生期間を確保することが品質に直結します。気温や湿度に応じた適切な養生を行わないと、ひび割れや強度不足が発生する恐れがあります。
  5. 施工時の安全管理
    スラブ打設は広範囲にわたる作業となり、高所作業を伴う場合も多いです。荷重バランスを常に監視し、職人や機材が集中的に乗ることで局部的に荷重超過が起きないよう計画を立てます。

Q&A

Q1: スラブの厚みはどのくらいが標準でしょうか?
A1: 用途やスパンによって異なりますが、住宅や小規模ビルでは150〜180mm程度のRCスラブが一般的です。大スパンになるほど厚くするか、リブを設けるなどの方法がとられます。

Q2: デッキスラブは錆びやすくありませんか?
A2: デッキスラブに使用されるデッキプレートは防錆処理が施されていることが多く、コンクリートに埋め込まれる部分は空気や水から遮断されるため大きな錆のリスクは低いです。ただし、端部や切り口は注意が必要です。

Q3: ワッフルスラブは住宅で使われることはありますか?
A3: 一般的には大規模建築物や駐車場などで使われるケースが多いですが、意匠的なメリットや大きなスパンを求める場合には住宅にも採用されることがあります。ただし施工コストが上昇する傾向があります。

Q4: スラブがたわむ原因は何でしょうか?
A4: 設計段階での鉄筋量やスラブ厚の不足、施工不良、予想外の大荷重などが主な原因です。適切な設計と品質管理、そして荷重配分の把握が必要です。

Q5: スラブのひび割れは完全になくすことはできますか?
A5: 完全にひび割れをゼロにするのは難しいです。適切な配筋や収縮対策、養生を行うことで、ひび割れ幅を小さく抑え、構造的な問題を防ぐようにします。

まとめ

スラブは建物の床や屋根を形成し、住環境の快適性や構造の安全性に大きく関与する重要な要素です。

RCスラブやデッキスラブ、PCスラブなど、さまざまな方式の特性を理解し、適切な設計や施工手順を守ることが望まれます。

とくにスパンや荷重に応じた厚さ・配筋の計画、防水や遮音対策、施工時の安全管理などをしっかりと行うことで、長期にわたり安心して利用できる空間づくりが可能になります。