スプリットティーは、主に鉄骨構造の接合部で使用される部材の一種です。
I形鋼のフランジ部分を切り出して“T”字に加工したものを指し、ビームやガーダーなどの接合に活用されます。
形状がT字であることから「ティー(T)」と呼ばれ、それを切り出して使うことから「スプリット(split)」という名前がついています。ボルト接合や溶接接合など、さまざまな施工方法に対応できるのが特徴です。
鉄骨造は高強度で大スパンを実現できる反面、部材同士の接合方法が建物全体の強度や耐久性を左右します。スプリットティーは、梁同士や梁と柱の取り合いなどで剛性を確保しつつ施工効率を高められる便利な部材として、多くの現場で採用されています。
スプリットティーの特徴
スプリットティーには、他の接合形式とは異なるメリットや特性があります。
以下ではその代表的なポイントを整理しました。
- 高い剛性
T字形状により、曲げやねじりに対して高い抵抗力を発揮します。特に上下にフランジをもつ形状なので、接合部にかかる応力を分散させやすい点が大きな利点です。 - 施工性の良さ
スプリットティーは、あらかじめ工場で切り出して穴あけや溶接準備を行うことができます。現場でのボルト接合や溶接を効率よく進められるため、工期短縮にも寄与します。 - 部材配置の柔軟性
梁端部を接合する際、スプリットティーを用いることで取り付け位置やプレート形状をある程度カスタマイズできます。これにより、梁深さや梁幅が異なる場合にも対応しやすくなります。 - メンテナンス性の向上
接合部が可視化しやすく、点検や補修が比較的容易です。万が一損傷があった場合でも、ボルト増し締めや補強プレートの追加がしやすいのもメリットです。
スプリットティー接合の用途
スプリットティーは、鉄骨造の各種接合部に広く用いられていますが、特に次のようなシーンで多用されます。
- 梁と梁の接合
大スパンで梁をつなぐ際、スプリットティーを介して両側からボルトや溶接で締結し、連続性と強度を確保します。鉄骨造のビルや工場など大空間を必要とする建物でよく見られます。 - 梁と柱の接合
柱のフランジにスプリットティーを取り付け、そこに梁を接合する方法です。H形柱の側面にT字部材を接合することで、梁の取り付けを正確かつ頑丈に実現します。 - 補強部材としての利用
既存の鉄骨に後付けで補強を行う場合、スプリットティーが便利です。比較的軽量で加工しやすく、ボルト接合で容易に追加補強ができます。
他の接合形式との比較表
スプリットティー以外にも、鉄骨構造にはさまざまな接合方法があります。ここでは、いくつか代表的な部材接合方法を挙げて比較してみましょう。
接合形式 | 特徴 | 施工性 | 剛性/強度 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|
スプリットティー | T字形状により高い剛性を得やすい。加工自由度が高い | 工場先行加工で容易 | 大きな曲げ・せん断にも対応 | 梁と梁、梁と柱の接合、補強 |
シングルプレート | 単一のプレートを使って簡易に接合 | 比較的容易 | 曲げに対しては弱い場合も | 軽量梁の接合、補助的な接合 |
ダブルアングル | L型アングルを両面に配置して接合 | 取り付け位置調整がやや難 | せん断力に対しては十分 | 梁・ブレースなどの接合 |
エンドプレート接合 | 梁端にプレートを溶接し、柱や梁にボルト固定 | 先行溶接が必要 | 剛接合が可能 | 柱梁剛接合、溶接量は増加 |
スプリットティーは、剛性面と施工性のバランスが良く、多様な用途に対応できることがわかります。一方で、シンプルな軽量梁ではシングルプレートやダブルアングルのほうが施工が簡単という場合もあります。
スプリットティー接合の留意点
メリットが多いスプリットティーですが、設計や施工時には以下の点に注意する必要があります。
- 適切な板厚と断面サイズの選定
スプリットティーとして切り出す鋼材のサイズや板厚は、かかる荷重や使用場所によって決定します。過剰に大きいとコスト増につながり、小さいと強度不足になりかねません。 - ボルト配置と孔加工
ボルト接合を行う場合は、孔加工位置やボルトのピッチが設計通りになっているかが重要です。ずれると接合強度が低下し、施工不良の原因となります。 - 溶接の品質管理
一部を溶接で固定する場合、溶接欠陥や応力集中が起こらないように丁寧な施工と検査が必要です。特にT字の根元部分は応力が集中しやすいため要注意です。 - 現場での仮組み確認
スプリットティーは、梁端部や柱との接合精度が重要です。工場製作段階と現場の実測値に差がないか、仮組みでチェックしながら施工を進めると精度が向上します。
Q&A
Q1: スプリットティーはどのように製作されるのですか?
A1: I形鋼のウェブを切断し、フランジ部分をT字として残す方法が一般的です。その後、ボルト孔加工や溶接用のエッジ処理を行い、必要に応じて塗装や防錆処理を施します。
Q2: シングルプレート接合と比べてスプリットティーの方が優れている点は何ですか?
A2: スプリットティーはT字断面による剛性が大きく、曲げやねじりに強い点が挙げられます。また、接合部に余裕をもった溶接やボルト配置ができるため、より大きな荷重や高い要求性能に対応しやすいです。
Q3: スプリットティーを使うと建築コストはどうなりますか?
A3: 材料費や加工費はかかりますが、現場施工を効率化できる側面もあるため、一概に高コストとは限りません。大スパンや高荷重がかかる建物ほど、そのメリットが活かされやすいです。
Q4: 溶接接合とボルト接合の選択はどのように行うべきでしょうか?
A4: 耐震設計や施工性、工期、コストなどを総合的に判断して決定します。溶接は剛性を高めやすいものの、施工管理が厳密になりがちです。ボルト接合は施工がやや簡単ですが、コネクタ数や配置に注意が必要です。
Q5: 既存構造の補強にスプリットティーを使う際、どのような手順で行いますか?
A5: まず既存材の強度や状態を調査し、補強計画を立案します。その後、必要なサイズのスプリットティーを加工し、干渉部材の撤去や孔加工を行い、ボルト接合または溶接を実施します。最後に検査や塗装を行い、施工完了です。
まとめ
スプリットティーは、鉄骨構造における接合部材として高い剛性と柔軟な施工性をもつ優れた手法です。
梁や柱との取り合いにおいて強度を確保しながら施工時間を短縮できるため、多くの建築プロジェクトで採用されています。
接合の際には、部材の板厚や溶接方法、ボルト孔の配置など、いくつかのポイントをしっかり押さえる必要があります。適切な設計と品質管理が行われれば、スプリットティーを使った接合は長期にわたり安定した構造性能を発揮します。
大スパンのオフィスビルや工場、あるいは既存構造の補強まで幅広く活用される部材であるため、プロジェクトの特性やコスト要因に応じて最適な設計を行うことが重要です。