芋継手・芋目地とは?定義、比較、重要な理由を解説

芋継手とは

芋継手(いもつぎて)は、コンクリート構造や鉄筋の接合部に段差や凹凸を設けて、ずれやせん断力に対して高い抵抗力を発揮するように工夫された継手のことです。

コンクリートを複数回に分けて打設する場合、施工継ぎ目の形状によってはコールドジョイント(打ち継ぎ不良)が生じ、構造的な弱点になりやすいとされています。

そこで芋継手では、あらかじめ型枠を用いて鍵型(キー状)やギザギザの凹凸をつくり、次回コンクリートがその溝にしっかりかみ合うように施工します。

これにより、水平力やせん断力に対して高い抵抗力が生まれ、構造の一体性と耐久性が向上します。

鉄筋コンクリート構造においては、鉄筋自体を重ね継ぎする部分(重ね継手)だけでなく、梁や柱、壁などの強度を左右する主要部材に対しても芋継手が活用される場合があります。

特に大規模な建築物や土木構造物では、一度に大量のコンクリートを打設しきれないケースが多く、芋継手を適切に設定することで、打ち継ぎ部分の弱点化を防ぐ狙いがあります。

芋目地とは

芋目地(いもめじ)は、芋継手とほぼ同義の概念です。

「継手」が部材どうしを連結する方法全般を指すのに対して、「目地」はその接合部のすき間や継ぎ目の形状を示す言葉として使われます。

とはいえ、実際の建設現場では両者の呼び方に厳密な区別を設けないケースも多いため、「芋継手」と言えば芋目地を含む、と理解されることがほとんどです。

芋目地が使われる場面は、壁や梁のように垂直または水平にコンクリートを継ぎ足すときが代表的です。

特に土間コンクリートを複数回に分けて打設する場合にも、継ぎ目(目地)のせん断抵抗力を高める目的で芋目地が設けられます。平らな目地だと継ぎ目が動きやすく、ひび割れが広がるリスクが高まりますが、芋目地ならかみ合わせ効果によりずれを抑えられます。

芋継手と芋目地の比較表

以下の表では、芋継手と芋目地の役割や用途を整理しています。実際には、ほぼ同じ意味で使われることが多いため、参考程度にご覧ください。

項目芋継手芋目地
主な用途コンクリートや鉄筋を継ぐ際に、ずれやひび割れを防止コンクリート打ち継ぎ部の目地形状を鍵状にして一体化
呼称の違い継ぎ手全体の工法を指すことが多い継ぎ目(目地)の形状を指すことが多い
メリットせん断抵抗力向上、構造の耐久性アップ施工不良によるコールドジョイントの抑制
施工時注意点型枠設置の精度や打設タイミングの管理凹凸形状にしっかりコンクリートが入るように施工

芋継手・芋目地が重要な理由

芋継手や芋目地が重要視される理由は、構造体の安全性と耐久性を確保するためです。

建物や橋梁などのコンクリート構造物は、曲げやせん断といった多様な力が加わります。継ぎ目が弱点化すると、ひび割れが発生して劣化が加速したり、大地震などの非常時に破壊が急激に進行する恐れがあります。

芋継手は以下のような効果を狙って施工されます。

  • ずれ防止(せん断抵抗力の向上)
    凸凹を付けることで、ずれ方向の力に抵抗しやすくなります。
  • 構造の一体化
    コンクリートどうしがかみ合い、強固に結びつくため、新旧コンクリートの境界が弱点化しにくくなります。
  • ひび割れ抑制
    施工継ぎ目の剥離やクラックの進行を防ぎ、耐久性が高まります。

施工時のポイント

  1. 型枠の精度確保
    芋継手を作るには、事前に鍵型やギザギザ状の型枠部材をセットします。型枠がずれていたり、設計どおりの段差を再現できていないと、十分なかみ合わせ効果が得られません。
  2. コンクリートの打設タイミング
    一度目の打設から次の打設までに時間が空きすぎると、コンクリートが硬化しすぎて付着不良が起きやすくなります。逆に、まだ硬化が十分でない状態で打設を行えば表面が崩れ、きれいな継ぎ目にならないリスクがあります。適切なタイミング管理が重要です。
  3. 継ぎ目の表面処理
    打ち継ぎ面にレイタンス(表面の弱い層)が残っていると、新コンクリートとの一体化を阻害する原因になります。必要に応じて表面をブラッシングや高圧洗浄して、清潔かつ粗面にしておくことが推奨されます。
  4. 養生の徹底
    継ぎ目部分は他の部位よりもひび割れや収縮の影響を受けやすいです。温度管理や湿潤養生をきちんと行い、初期段階でのクラック発生を抑えます。

芋継手・芋目地のメリットとデメリット

メリット

  • ずれ抵抗力が高まる
  • ひび割れやコールドジョイントのリスク軽減
  • 全体の構造耐力向上

デメリット

  • 型枠設置や施工に手間が増える
  • 複雑な形状によりコストが上がる場合がある

Q&A

Q: 芋継手と芋目地に違いはありますか?
A: 一般的には同じような意味合いで使われることが多いです。厳密に言うと、芋継手は施工方法全体を、芋目地は継ぎ目の形状を指す場合が多いですが、現場ではほぼ同義です。

Q: なぜ継ぎ目をギザギザにする必要があるのですか?
A: 継ぎ目をギザギザや鍵状にすることで、ずれ方向の力に対してしっかりとかみ合い、構造的な一体性を高めるためです。

Q: 芋継手を施工するときに注意すべきことは何ですか?
A: 型枠の設置精度、適切な打設タイミング、継ぎ目の表面処理と養生が重要です。これらを怠るとコールドジョイントが生じ、継ぎ目が弱点化する可能性があります。

Q: 土間コンクリートにも芋目地は必要ですか?
A: 大きな面積の土間コンクリートを何度かに分けて打設する場合、目地部を鍵状にすることで不陸やひび割れを抑え、長期的な耐久性向上に役立ちます。

Q: 芋継手の施工コストは高いですか?
A: 一般的な平継手に比べると型枠部材や施工手間が増えるため、コストはやや高くなる傾向があります。しかし構造的に大きなメリットがあるため、トータルで見ると有益な工法といえます。

まとめ

芋継手や芋目地は、コンクリートを複数回に分けて打設する際の重要な接合技術です。

鍵状やギザギザ形状を設けることで、継ぎ目のずれを防ぎ、強固な一体性と耐久性を実現します。コールドジョイントの発生を抑え、ひび割れが広がるリスクを低減できる点が大きなメリットです。

ただし、型枠や施工手間、コストが通常よりかかることもあるため、設計段階で必要性を検討し、施工時には正確な型枠設置や継ぎ目の表面処理を徹底することが肝心です。