ラーメン構造とブレース構造の違いとは?特徴の比較、主な用途をQ&Aで解説!

建物の骨組みを考える際に、耐震性や施工性、コストなどの面から「ラーメン構造」と「ブレース構造」がよく比較されます。

どちらも鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)の設計で頻繁に登場する構造形式ですが、その成り立ちや利点・欠点は異なります。

今回は、ラーメン構造とブレース構造がどのように違うのか、各々の特徴を押さえながら解説します。

ラーメン構造とは

ラーメン構造とは、柱と梁を剛接合することで一体的に荷重を支える構造形式です。

ドイツ語の「Rahmen(枠)」に由来し、日本語では「骨組み構造」とも呼ばれます。

  • 特徴
    1. 剛接合
      柱と梁を剛接合することで、水平力や鉛直力を枠組み全体で分担し、剛性が高まります。特に梁・柱接合部が塑性ヒンジとなって地震エネルギーを吸収する設計がしやすいです。
    2. 大スパン・自由度
      壁やブレースが少なく、空間を大きく取りやすいため、室内レイアウトの自由度が高いです。大ホールやオフィス空間など、広々としたスペースが求められる建物に向いています。
    3. 施工難易度とコスト
      剛接合を実現するために、溶接やボルト接合などが精密に行われる必要があります。施工が複雑になり、部材自体も剛性を保つために太くなる傾向があり、コスト面でやや不利になる場合もあります。
  • 主な用途
    1. 高層ビル・超高層建築
      ラーメン構造で耐震性を高めつつ、広い空間の確保が可能です。
    2. オフィスビルや商業施設
      内部を自由にレイアウト変更できるメリットが重視されるため、多くの建物で採用されています。
    3. 大ホールや体育館
      柱間を大きくできるため、観客席やステージを広くする設計が可能です。

ブレース構造とは

ブレース構造とは、ラーメン架構に斜材(ブレース)を配置して水平剛性を高める構造形式を指します。

斜めに取り付けられたブレースが引張力や圧縮力を担い、地震力や風荷重などの水平力を効率的に伝達する仕組みです。

  • 特徴
    1. 水平剛性の向上
      ブレースが斜材となることで、建物全体の変形を抑えやすく、地震時の揺れを小さくできます。
    2. 部材断面の減少
      ラーメンのみの場合と比べ、ブレースが水平力を分担してくれるため、柱や梁の断面を小さく抑えることが可能です。
    3. 空間制約
      斜材が室内や外観に入るため、開口やレイアウトに制限が生じます。特にデザイン面や室内利用で妥協が必要になる場合があります。
  • 主な用途
    1. 低層〜中層建築
      コストを抑えつつ地震対策をしっかり行いたい場面で選ばれることが多いです。
    2. 工場や倉庫
      大きな開口部が不要で、柱と梁の間に斜材を設置しやすい構造物に適しています。
    3. 改修・補強工事
      既存のラーメン構造にブレースを追加することで、耐震補強を行うケースが増えています。

ラーメン構造とブレース構造の比較表

項目ラーメン構造ブレース構造
水平力の伝達梁・柱接合部を剛接合し、全体で抵抗斜材(ブレース)で引張・圧縮力を負担
空間の自由度高い(壁や斜材を少なくできる)ブレースが室内外に配置されるため制限あり
部材断面剛接合のため梁・柱が太くなりやすいブレースが水平力を分担し、柱・梁断面を削減
施工性接合部の溶接やボルトが複雑ブレース取付など追加工程が必要
耐震補強柱・梁接合部の補強が中心ブレースを増設または強化して耐震性能向上
主な適用建物高層ビル、オフィス、商業施設、大空間施設低層〜中層建築、工場、倉庫、補強工事など
コスト高めになりやすい場合によって抑えやすい

設計のポイント

  1. 地震力・風荷重の想定
    ラーメン構造かブレース構造かを選ぶ前に、建物が受ける水平力をどの程度想定するかを明確にします。高層ほどラーメン構造が主流になり、中層以下ではブレース構造も有力です。
  2. 用途と空間の要件
    広い空間が必要なら、ブレースを設置するスペースが邪魔になる場合があります。一方、倉庫や工場ならブレースがあっても問題ないケースが多いです。
  3. 施工性とコスト
    ラーメン構造は部材精度や接合部の施工に手間がかかりがちです。ブレース構造は斜材の加工や接合部、壁との取り合いなどを考慮する必要があります。
  4. 将来の改修
    オフィスビルなど将来レイアウト変更が多い建物では、ラーメン構造のほうが空間をフレキシブルに使えます。補強や改築の計画も踏まえて検討します。

施工例や注意点

  • ラーメン構造
    • 柱・梁接合部の高力ボルトや溶接に不備があると耐震性能が大幅に低下する。
    • 柱と梁の接合角度が狂うと大きな偏心が生まれ、構造計算通りの力が伝達されない恐れがある。
  • ブレース構造
    • ブレースに引張力が集中する場合、接合部の溶接剥がれや座屈に注意。
    • 建物の意匠設計やレイアウトにおいて、ブレース配置が制限になるため、早期に計画に組み込むことが大切。

Q&A

Q1: ラーメン構造とブレース構造の耐震性能はどちらが優れていますか?
A1: 一概には言えません。地震力に対する設計方法や建物規模、用途によって異なります。高層建築ではラーメン構造が一般的であり、中・低層ではブレース構造が効率的な場合もあります。

Q2: ブレース構造で大空間を作る方法はありますか?
A2: 一部のスパンのみブレースを省いてラーメン要素を組み合わせる混合構造で対応するケースがあります。ただし構造計算が複雑化する点に注意が必要です。

Q3: 木造住宅にもラーメン構造やブレース構造は存在しますか?
A3: 木造の場合は筋かいや構造用合板を用いた壁倍率による構造が一般的で、「在来軸組工法」や「枠組壁工法」に近い考え方です。厳密にはラーメン構造とは異なりますが、考え方は類似します。

Q4: ラーメン構造で地震エネルギーを吸収する仕組みはどうなりますか?
A4: 主に柱・梁接合部で塑性ヒンジが形成され、そこがダクタイル(粘り強く)に変形することでエネルギーを吸収し、建物倒壊を防ぎます。

Q5: 将来的な増築や用途変更を考えるとどちらが有利でしょうか?
A5: ラーメン構造は柱・梁だけで水平方向を負担するため、仕切り壁やブレースを取り払いやすく、空間の変更に柔軟に対応できます。ブレース構造の場合、斜材の位置変更が必要になり手間が増えます。

まとめ

ラーメン構造は、柱と梁を剛接合して大きな空間と強固な骨組みを実現する一方、ブレース構造は斜材を使うことで効率的に水平力を負担し、柱や梁をスリムにできる利点があります。

建物の用途や規模、デザイン、コスト、将来の改修計画など、さまざまな要因を総合的に考慮して選択することが大切です。

どちらにも一長一短があるため、設計者や施主の意図を踏まえた最適な構造方式を検討することで、安全性と機能性を高められます。