捨てコンとは、基礎工事の際に打設される薄いコンクリート層のことで、本設の基礎コンクリートとは区別されます。
強度の確保を目的に打設するわけではなく、文字どおり「捨ててしまう」ような位置づけですが、型枠の墨出しや作業の効率化、安全性向上など、多面的な利点があります。
建築現場では、基礎底面を整えるうえで重要な工程として認識されています。
捨てコンを打設する理由
- 型枠の正確な位置出し
しっかり平滑に仕上げられた捨てコン層があることで、型枠の墨出し作業がスムーズになり、基礎位置のズレや誤差を最小限に抑えられます。 - 作業性向上
砂利や砕石の地盤上だと、資材の設置や人の移動が困難になりますが、捨てコンを打設しておけば、水平で安定した作業床が確保できます。 - コンクリートの品質確保
本基礎に含まれる鉄筋が地盤上で直接汚れたり曲がったりしにくくなり、清潔かつ正確な姿勢で組立ができます。打ち込み時のコンクリートもダレや混入物を防ぎやすくなります。 - 雨水や泥の対策
雨天時に泥濘(ぬかるみ)が生じやすい下地をカバーし、施工工程を安定して進めることが可能です。現場条件によっては、工程短縮のメリットが大きいです。
捨てコン打設の流れ
- 地盤整地・砕石敷き
まずは基礎底を整え、砕石を敷き固めます。これが捨てコンの受け面となるので、レベル出しは慎重に行います。 - 型枠・捨てコン打設準備
バラつきが大きい場合は不陸調整をし、指定の厚み(一般に50〜100mm程度)を確保できるようにします。 - コンクリート打設
ミキサー車からポンプなどを通してコンクリートを流し込み、バイブレーションは軽く行う場合と行わない場合があります。表面をならして水平を確保します。 - 養生・墨出し
捨てコンが硬化した後、墨出しを行います。ここで基礎の正確な位置と寸法を再度確認し、本基礎の配筋・型枠工程へ移ります。
捨てコンの種類
- 普通コンクリート
一般的なポルトランドセメントを使用し、強度は高くない場合が多いですが、施工性重視の配合で打設します。 - 再生コンクリート
環境負荷低減の観点から、リサイクル材を含んだコンクリートを使用するケースがあります。捨てコンは強度目的ではないので、再生材を活かしやすいです。 - 流動化コンクリート
流動化剤を加え、スランプを大きくして打設を容易にしたコンクリートです。複雑な形状や配筋がある箇所の捨てコンに採用されることもあります。
施工上の注意点
- 打設厚の管理
捨てコンはあまり厚すぎると無駄なコスト増につながり、薄すぎると作業床として機能が不十分になります。現場の指示や設計図に沿った厚みを守りましょう。 - レイタンス処理
捨てコン表面にレイタンス(セメントのノロ)が残り、次の工程で接着不良を起こすことがあるため、必要に応じて軽くスクレイプや洗浄を行います。 - 地盤の押し上げ対策
捨てコン下の地盤が柔らかいと、コンクリートの重さや施工荷重で沈下や押し上げが発生する場合があります。地盤が不安定な箇所は改良や補強を検討します。 - 環境条件の配慮
打設時に雨天や極寒・酷暑など、気象条件が厳しい場合は、コンクリートの硬化不良が起こりやすいので、打設タイミングや養生方法を工夫します。
デッキコンなどとの関係
地盤上に直接打つ捨てコンと、鉄骨造などで用いられるデッキコンは混同されやすいですが、目的も施工方法も異なります。
デッキコンは型枠としてのデッキプレートにコンクリートを打つ工法を指し、強度の一部を担います。
一方、捨てコンは強度確保が目的ではなく、あくまで作業基面づくりのためのコンクリートです。
項目 | 捨てコン | デッキコン |
---|---|---|
目的 | 作業床・墨出し基面の確保 | デッキプレートを型枠代わりに利用 |
主な構造 | 地盤上に薄く打ちコンクリートで形成 | 鋼板デッキ+コンクリートで床を形成 |
主な用途 | 基礎工事の下地 | 鉄骨造の床スラブ |
強度への寄与 | 基本的に寄与しない | 本スラブの一部として機能 |
Q&A
Q1: 捨てコンにはどのくらいの厚みが一般的ですか?
A1: 一般的には50〜100mm程度とされますが、現場条件や設計指示によって異なります。
Q2: 捨てコンを省略することは可能でしょうか?
A2: 理論的には可能ですが、型枠や墨出しが煩雑になり、最終的に手戻りが増えてコスト増になる場合が多いです。
Q3: 捨てコンにはどんな強度のコンクリートを使うのですか?
A3: 特に高強度は求められず、設計上は18〜21N/mm²程度の普通コンクリートを用いるケースが多いです。
Q4: 捨てコンの養生期間は必要ですか?
A4: 一般的に翌日〜数日程度で墨出しが行える硬化が得られれば十分です。長期養生は通常行いません。
Q5: 再利用コンクリートを使う場合の注意点は?
A5: 混入物の管理や配合設計がしっかりしている必要があります。捨てコンとしては強度要求が少ないとはいえ、品質のばらつきには注意が必要です。
まとめ
捨てコンは、本格的な基礎コンクリートではなく、あくまで型枠や墨出しのための作業床です。にもかかわらず、これを適切に施行することで基礎工事全体の品質と効率が大きく向上します。
地盤面をフラットに整え、施工中に発生しがちなトラブル(ズレや不陸、汚れなど)を抑制し、結果として構造物の精度向上と工期短縮に寄与します。
無駄に思われがちな捨てコンですが、安全性や最終的なコストメリットを考えると、非常に重要な役割を果たしているのです。