ブラスト処理とは?目的、種類、ポイントを比較表で解説!

ブラスト処理とは、高速で吹きつける研磨材(メディア)や空気圧を利用して、対象物の表面を研削・洗浄・調整する技術です。

建築分野では、金属部材の錆や汚れを除去する下地調整や、コンクリート面の表面処理などに用いられます。

ペンキや防水材などの新しい仕上げを行う前に、古い塗膜や不純物を除去して表面を粗く整えることで、仕上げ材の付着性を高めるのが主な目的です。また、装飾のためにあえて表面を荒らすことで意匠効果を狙う例もあります。

ブラスト処理の目的

  1. 下地調整
    新たな塗装や防錆処理を行う前に、表面に付着した錆や旧塗膜、汚れを除去し、親和性の高い下地を整えます。しっかりとした表面を作ることで、後から施工する塗料や防水材が剥がれにくくなります。
  2. 表面強化
    コンクリートや金属の表面をブラストによって微細に荒らすと、微小な凹凸ができ、表層の強度向上や付着力の増大が期待できます。
  3. 意匠性の向上
    コンクリート打放し面の表面をブラスト処理することで、独特の風合いやパターンを得られます。照明が当たった際の陰影や素材感を強調する効果もあります。
  4. リニューアル工事での再利用
    既存の建築部材や部品の再利用を検討する場合、ブラスト処理を行って劣化部分を落とし、表面をリフレッシュさせるケースがあります。これにより建材の寿命延長にも繋がります。

ブラスト処理の種類

  • サンドブラスト
    砂(シリカサンド)などの研磨材を高速で吹きつけ、対象面を研磨するオーソドックスな方法です。錆落としや塗膜の剥離に活用されますが、粉塵や健康被害のリスクを抑えるための防護策が重要です。
  • ショットブラスト
    金属粒子やスチールショットを打ち付ける手法です。主に金属表面のスケール除去やコンクリート床の表面処理に用いられ、高い衝撃力により効果的な表面再生が期待できます。
  • グリットブラスト
    スチールグリットやアルミナ、ガーネットなどの研磨材を使って強力な除去力を得る方法です。錆びた鋼材や頑固な塗膜を除去する際に有効で、ショットブラストよりも角の立った研磨材を用いて強く表面を削ります。
  • ウェットブラスト
    水と研磨材を混合し、粉塵の発生を抑えながら表面を処理する手法です。工場内や屋内環境での作業や、有害物質を含む塗膜の除去に適しています。
  • ドライアイスブラスト
    固形ドライアイスを砕いたものを噴射する環境負荷の少ない方法です。塗装の剥離やオイル汚れの除去に効果があり、ブラスト後のメディアが気化するため清掃手間が減るメリットがあります。

ブラスト処理の比較表

種類研磨材主な用途特徴デメリット
サンドブラストシリカサンド錆落とし・塗装剥がし一般的で汎用性が高い粉塵が多く、安全対策が必須
ショットブラストスチールショット金属表面のスケール除去・床面衝撃力が強く効率的騒音・衝撃が大きい
グリットブラストスチールグリット等頑固な錆・塗膜除去角のある研磨材により強力な除去力表面が粗くなりやすい
ウェットブラスト水+研磨材粉塵抑制下での表面処理粉塵が少なく、有害物質も飛散しにくい施工コストが高く、濡れた後の乾燥が必要
ドライアイスブラストドライアイス粒塗膜剥がし・油汚れ除去廃材が少なく環境に優しい初期設備が高価

ブラスト処理におけるポイント

  1. 粉塵対策
    乾式ブラストの際は、作業者の防護具着用と粉塵飛散を防ぐシート養生が不可欠です。呼吸器系障害や近隣への迷惑を防ぐため、集塵装置や換気も行います。
  2. 騒音・振動
    高圧の空気やショットが当たる衝撃音が大きいため、作業時間や近隣への配慮が必要です。状況に応じて防音パネルを設置したり、夜間・早朝の作業を避けるなどの対策を取ることがあります。
  3. 研磨材の選定
    対象の素材や塗膜の種類、仕上げ目標に合わせて研磨材を変えます。金属の錆落としにはスチールグリットが効果的で、コンクリート表面のリフレッシュにはショットブラストが使われるケースが多いです。
  4. 下地の確認
    ブラスト後に下地が脆弱な場合、追加補修や再度のブラスト処理が必要になることもあります。ひび割れや空洞の有無をあらかじめ調査し、場合によっては先行補修を行います。
  5. 仕上げ材との相性
    ブラスト処理後は表面が適度に荒れているため、塗料や防水材の密着性が高まります。ただし、過度に荒れすぎた場合は厚塗りが必要になるなど、コストや施工時間に影響が出ることもあります。

ブラスト処理と他の表面処理の違い

  • ケミカル洗浄
    薬剤を使って錆や油汚れを除去する方法ですが、深く浸透した汚れには効果が薄い場合があります。ブラスト処理のように物理的に削り取るわけではないため、下地の粗さ確保は期待できません。
  • グラインダー研磨
    回転する砥石で表面を研削する方法です。狭い面や細かい部分にも対応できますが、大面積を一度に処理するには効率が悪い場合が多いです。
  • ウォータージェット
    高圧水で塗膜や汚れを除去する方法です。ブラストとは異なり研磨材を使わず、水圧のみで除去します。コンクリート中の骨材を痛めるリスクが少ないメリットもありますが、深い錆には効果が限定的です。

ブラスト処理を実施するメリット

  1. 下地調整が高精度
    塗膜や汚れを隅々まで落とし、表面に微細な凹凸を作ることで新しい仕上げ材がしっかり密着します。
  2. 長期的な耐久性の向上
    錆や腐食因子を除去することで、塗膜や防食コーティングの寿命が延びます。定期メンテナンスと組み合わせれば建物全体の寿命延長にも寄与します。
  3. 環境負荷軽減
    ウェットブラストやドライアイスブラストなどを選べば、粉塵や有害物質の飛散を抑えられるため、作業環境や近隣への影響を軽減できます。

ブラスト処理の留意点

  • コストと期間
    ブラスト機材や養生、集塵設備などが必要となり、他の方法よりも初期コストや工期がかかる場合があります。
  • 熟練度
    均一な仕上がりを得るには、ノズルの保持角度や作業速度に熟練した技術者が求められます。
  • 環境規制
    粉塵や騒音に関する規制、危険物取り扱いなど、地域や現場の状況に応じた法的・安全対策を遵守する必要があります。

Q&A

Q1: ブラスト処理後に粉塵の後片付けはどのように行いますか?
A1: 乾式の場合は集塵機で回収し、飛散を最小限に抑えるよう作業エリアを囲います。ウェット式ならスラリー状の排水をフィルターや沈殿槽で処理します。

Q2: 木材の表面にブラスト処理は行えますか?
A2: 可能です。特に木材の古い塗装を剥がしたり、表面の毛羽立ちを取り除いたりする場合に利用されますが、木質を痛め過ぎないように研磨材選定と圧力管理が必要です。

Q3: 外壁にタイルが貼られている場合でもブラスト処理はできますか?
A3: タイル自体が脆弱な場合は剥離する恐れがあるため、事前調査が必要です。タイル目地の汚れ除去やタイル下地の調査で活用されることもあります。

Q4: ブラスト処理後、どのくらいの期間で塗装などを行えばいいのでしょうか?
A4: 一般的にはサビの再発を防ぐため、なるべく早めに塗装に移るのが理想です。湿気や気温によっても錆の発生速度が変わるため、処理後1日以内など、短時間で塗装工程に進むのが望ましいです。

Q5: ブラスト処理とショットピーニングは同じですか?
A5: 似ていますが異なります。ショットピーニングは金属材料の疲労強度を高めるために表面を硬化させる手法で、ブラスト処理は主に表面の汚れや塗膜除去、下地調整を目的としています。

まとめ

ブラスト処理は、古い塗膜や錆の除去、コンクリート表面の粗面化などを効率的に行う建築技術です。

下地調整が不十分だと、後に施す塗装や防水、補修材が剥離しやすくなり、せっかくの施工が台無しになるリスクがあります。ブラスト処理を活用することで、表面を適切に整え、素材本来の耐久性や新たな仕上げ材の密着性を高められます。

サンドブラスト、ショットブラスト、グリットブラスト、ウェットブラストなどさまざまな手法があるため、用途やコスト、環境への配慮に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。