土の分類を正確に理解することは、地盤調査や建設計画を立てるうえで欠かせません。
土はその粒径(粒の大きさ)や成り立ちによって性質が大きく変わり、建物の基礎や道路工事などに与える影響もさまざまです。
今回は、よく耳にする「礫」「砂」「シルト」「粘土」の主な違いを解説します。
礫(れき)とは
礫とは、直径2mmを超える大きめの粒で構成される土です。
一般に川原や海岸などで見かける小石や玉石が該当します。日本の土工学では、粒径2mm以上のものを礫と呼ぶのが通例です。
- 特徴
- 粒が大きいため空隙(隙間)が多く、水はけが良い
- 粘性が低く、締め固めても変形しにくいが、かみ合わせが弱い場合はバラバラに動きやすい
- 地盤としては安定しやすいケースが多い
- 主な用途
- 砕石として道路工事の下層材やコンクリートの骨材に利用
- 透水性が求められる場面で利用(地下排水材など)
砂とは
砂は、土の中でも直径2mm~0.075mm程度の粒子を指します。
川砂や海砂など身近な存在で、建築材料としても盛んに使われています。
- 特徴
- 粒子が比較的大きめで、肉眼で確認しやすい
- 粘性がほとんどなく、水を含んでもベタベタしにくい
- 水はけが良く、乾燥するとサラサラになる
- 粒同士のかみ合わせが限定的なので、移動や流動が起こりやすい場合も
- 主な用途
- コンクリートやモルタルの骨材
- 庭やグラウンドの表層材
- 造成地盤の締め固め材
シルトとは
シルトは、砂よりも微細で粘土よりも粗い粒径をもつ土です。
具体的には0.075mmから0.005mm程度の粒子を指します。見た目では砂と粘土の中間のような性質を持ちますが、水を多く含むと流動化しやすく、乾くと粉状になりやすいのも特徴です。
- 特徴
- 肉眼では細かすぎて粒子を区別しにくい
- ベタつきは少ないが、水分量によってはぬかるみやすくなる
- 時にダスト状になり、風で飛ばされやすい
- 強度や締め固め特性が安定しにくい
- 主な用途
- 単体での建築用途は少なく、砂や粘土と混じり合うことが多い
- 路盤材や盛土材に混ざる場合もあるが、過度に含むと地盤強度が下がるリスクあり
粘土とは
粘土は、粒径が0.005mm以下と非常に微細な粒子で構成される土です。
水を含むと塑性(柔らかく成形できる性質)が高まり、乾燥すると収縮するなど、ほかの土粒子にはない特性があります。
- 特徴
- 水分を吸収すると膨潤し、乾燥すると収縮してひび割れが生じる
- ベタベタと粘り気が強い
- 粒子表面に電気的な吸着力があるため、水分を抱え込む性質が強い
- 透水性が非常に低く、地下水を通しにくい
- 主な用途
- 水密性を必要とする場面(ため池やダムの遮水層など)
- レンガや陶器などの原料(粘土鉱物)
- 地盤としては沈下や膨張、収縮に注意が必要
礫・砂・シルト・粘土の比較表
種類 | 粒径(目安) | 水はけ | 粘性 | 主な課題 | 用途・特徴 |
---|---|---|---|---|---|
礫 | 2mm以上 | 優れている | ほぼなし | 粒子のかみ合わせ次第では動きやすい | 道路の下層材、コンクリート骨材など |
砂 | 2mm~0.075mm | 良い | ほぼなし | 流動化に注意(締固め不足時) | 骨材、庭やグラウンドなどの表層材 |
シルト | 0.075mm~0.005mm | 中程度 | 低い | 水分により流動化や粉じん化 | 建設材としては混合状態で利用が多い |
粘土 | 0.005mm以下 | 非常に悪い | 高い | 膨張・収縮による地盤沈下や亀裂 | 遮水層、レンガ・陶器などの原料 |
土の粒径が建築にもたらす影響
- 地盤の支持力
礫や砂は空隙が大きいため、排水性が良く変形しにくい傾向にあり、地盤としての支持力が期待できます。一方、シルトや粘土は排水性が悪く、圧密沈下や膨張収縮を起こすリスクがあります。 - 圧密沈下
粘土層では、建物の重みを受けて水分が徐々に押し出される「圧密」が長期間にわたって進行します。これが大きいと建物に傾きや亀裂が生じる可能性があります。 - 液状化
砂質地盤は地震動を受けると液状化を起こしやすくなる場合があります。礫質やしっかり締固められた地盤は液状化リスクが低いですが、シルトの多い砂地盤などは注意が必要です。 - 透水性と排水計画
土壌の透水性が低い粘土やシルトでは、水が溜まりやすく排水計画に気を配る必要があります。逆に礫や砂は透水性が高いため、地下水位や近隣への影響を考慮して計画を練る必要があります。
建築現場での実例・注意点
- 造成地
造成工事で地盤改良を行う場合、砂や礫が主体なら比較的簡単に締め固められますが、粘土やシルトが多いと改良工法を慎重に検討しなければなりません。 - 基礎工法の選定
深い粘土層がある場合は杭基礎を選ぶことが多く、礫質土がある場合は直接基礎や布基礎で対応できる可能性が高いです。 - 排水計画と地下水
砂や礫層があると雨水が地下に浸透しやすく、隣地への浸透や地下水位の上昇を考慮する必要があります。一方、粘土層は水を通しにくいため、表面排水が滞留しやすくなることがあります。 - 液状化対策
沿岸部で砂質地盤が広がる地域では、液状化対策が重要です。例えば締め固めや地盤改良、砂柱工法などを用いて、地震時の液状化リスクを低減します。
Q&A
Q1: 「砂質土」と「砂」は同じ意味ですか?
A1: 似ていますが、砂質土には砂が主体である土壌全般が含まれ、シルトや礫などが一部混合されている場合もあります。純粋な砂は粒子が一定範囲に集中した状態を指します。
Q2: 粘土質地盤を改良せずに家を建てるとどうなりますか?
A2: 圧密沈下や膨張収縮が起きやすく、家が傾いたり基礎が壊れたりするリスクが高まります。必要に応じて地盤改良や杭基礎を検討しましょう。
Q3: シルト層が多い土地は建築に不向きですか?
A3: 必ずしも不向きとは限りませんが、締め固めや排水対策を入念に行う必要があります。地盤調査の結果に応じて、設計を最適化することが重要です。
Q4: 礫や砂が多い地盤は必ず良好地盤といえますか?
A4: 一般的には強度が高い傾向がありますが、粒子同士のかみ合わせや水位などの条件次第で安定性は変わります。必ず地盤調査で確認しましょう。
Q5: 粘土の収縮膨張を抑える方法はありますか?
A5: 石灰やセメント系材料による改良が代表的です。また、排水をよくして含水比をコントロールすることも有効です。
まとめ
礫・砂・シルト・粘土は、粒径や性質が異なり、建築・土木の分野では大きく扱いが分かれます。
礫や砂は透水性と安定性に優れる反面、液状化リスクがある場合があるなど注意点もあります。シルトや粘土は細粒で、水分による変形や強度低下が懸念される一方、水密性を活かした用途も存在します。
いずれにしても、地盤の状態を正しく把握し、適切な基礎や排水対策、地盤改良を行うことで安全かつ長寿命な構造物を実現できます。