荷重と応力の違いとは?特徴、関係性、Q&Aを解説!

建築分野では、建物や構造物に作用する外部の力を「荷重(Load)」と呼びます。それに対して、部材や材料がその力を受けた結果として、内部に生じる抵抗や応答を「応力(Stress)」といいます。

荷重と応力は同じように使われる印象がありますが、その本質は全く異なります。

荷重は外的な要因である「入力」、応力は材料内部で生じる「反応」と考えると理解しやすいです。

今回は、荷重と応力の違いとその関連性をわかりやすく解説します。

荷重とは

荷重は建物や構造物に作用する力や重さの総称です。

例えば人や家具などの「積載荷重」、風や地震などの「外力」、自重などさまざまな種類があります。

建物を設計する際には、それぞれの荷重を想定し、組み合わせを考慮したうえで安全性を検討します。

  • 静的荷重
    時間的にほぼ一定で変化が少ない荷重のことです。建物自体の重さ(自重)や家具などの恒常的な重さが該当します。
  • 動的荷重
    時間や状況によって変動する荷重のことです。地震・風・衝撃・振動などが含まれ、設計時には動的解析が重要となります。
  • 積載荷重
    人や家具、設備機器など、使用状況に応じて室内や床上に追加される荷重です。オフィスや店舗などでは、用途により想定荷重が異なります。

応力とは

応力は、荷重によって材料内部に発生する抵抗力を断面積で割った値です。

主にσ(シグマ)で表され、単位面積あたりにどの程度の力がかかっているかを示します。

建物が荷重を受けると、部材内部では引張・圧縮・曲げ・せん断などの応力が生じ、その応力が材料の限界を超えると部材が損傷や破壊を起こします。

応力の種類

  • 引張応力(Tensile Stress)
    材料を引き伸ばすように作用し、部材が引き裂かれる方向に力が働きます。
  • 圧縮応力(Compressive Stress)
    材料を押し潰す方向に働き、柱などがつぶれる原因となります。
  • 曲げ応力(Bending Stress)
    梁などが曲げられる際に生じ、上側は圧縮、下側は引張になるケースが多いです。
  • せん断応力(Shear Stress)
    ずれ方向の力によって生じる応力です。ボルトやピンでつなぐ接合部などで重要になります。

数式で見る応力の計算例

応力σは、荷重(外力)Fを部材の断面積Aで割って求められます。

\[ \sigma = \frac{F}{A} \] \begin{array}{ll} \text{ここで:} & \\ \sigma & : \text{応力(N/mm²など)} \\ F & : \text{荷重(外力)(N)} \\ A & : \text{断面積(mm²など)} \\ \end{array}

このように、同じ荷重でも断面積が小さいと応力が大きくなり、材料にかかる負担が増大します。

荷重と応力の比較表

項目荷重(Load)応力(Stress)
意味構造物に作用する外力や重さ材料内部に生じる抵抗力を断面積で割った値
種類静的荷重、動的荷重、積載荷重等引張応力、圧縮応力、曲げ応力、せん断応力等
主な単位N(ニュートン)、kgfなどN/mm²、MPaなど
設計への影響部材寸法・補強方法の検討基準材料強度・断面形状を決めるうえで重要
本質的な違い外的要因(入力)内部での反応(出力)

荷重と応力の関係

荷重はあくまで外部から構造物に作用する力であり、応力はその力に対して材料内部で発生する力の伝達状態といえます。

荷重が大きければ大きいほど、材料に発生する応力も大きくなるのが一般的ですが、同じ荷重でも断面積や部材形状、支点条件などによって応力値は変わります。

設計者は、想定される荷重をもとに応力を計算し、部材が破壊に至らないように安全率を十分確保する必要があります。

設計上のポイント

  1. 荷重ケースの多様性
    建物の用途や立地条件に応じ、静的荷重や動的荷重を組み合わせる必要があります。地震時や強風時など、荷重ケースを幅広く想定して安全を確保します。
  2. 材料強度・断面形状の選定
    応力に対して十分な強度を持つ材料を選び、必要な断面積や形状を設計します。たとえば梁なら曲げ剛性を高める断面を、柱なら圧縮に耐えられる断面を選択します。
  3. 安全率(Factor of Safety)の考慮
    設計では、理論上の許容応力を決定し、設計応力がその範囲内に収まるようにします。地震・衝撃などの不確定要素に備え、余裕を持った安全率を設定することが重要です。
  4. 接合部の検討
    応力の伝達が集中する接合部(ボルト接合や溶接部など)は、部材の端部よりも応力が大きくなりがちです。実際の施工条件や応力集中を踏まえ、詳細設計を行います。

Q&A

Q1: 荷重と応力を混同しやすい理由は何ですか?
A1: どちらも力に関する用語であり、見た目や扱う単位が似通っているため混同しやすいです。しかし、荷重は外からの力、応力は内部での応答という違いがあります。

Q2: 応力はなぜ断面積で割って計算するのですか?
A2: 同じ荷重でも断面が大きいほど力が分散し、小さいほど集中するためです。断面積で割ることで、部材内部の力の分布状態を表すことができます。

Q3: 地震荷重はどう考慮すればいいのでしょうか?
A3: 地震時には水平力が大きく働くため、構造全体のバランスや接合部の補強など、地震動を踏まえた設計が必要です。各国の耐震基準に従い、動的解析や許容応力度設計を行います。

Q4: 応力とひずみの違いは何ですか?
A4: 応力は材料内部の抵抗力(力)に関する量で、ひずみはそれによって生じる変形量を表します。材料力学では、応力とひずみを関連付けて研究されます。

Q5: 安全率を高くしすぎると何が問題になるのですか?
A5: 設計コストが増大し、部材サイズや材料費が過剰になる可能性があります。安全と経済性のバランスを考慮した設定が重要です。

まとめ

荷重は建物に作用する外的な力、応力はそれに対して材料内部で発生する力の反応という違いがあります。

設計時には、考慮すべき荷重を正しく把握し、それによって生じる応力を計算して、材料や断面形状、接合部の詳細を詰めていきます。

応力を過大にしないようにするためには、余裕をもった安全率や適切な材料選定、さらに荷重ケースごとの検討が欠かせません。

建物の安全性と経済性を両立させるうえで、荷重と応力を正しく理解し区別することは非常に大切です。