ビルドHとロールHの違いは?各特徴、選定のポイントを解説!

ビルドH鋼とロールH鋼は、どちらもH形断面をもつ鋼材ですが、その製造方法や用途が異なるため、適切に選ぶことでコストや性能を最適化できます。

今回は、両者の特徴や使い分けのポイントを体系的に解説します。

ビルドH鋼の特徴

ビルドH鋼は、鋼板を切断・溶接してH形断面に組み立てたものです。

複数枚のプレート(フランジとウェブ)を溶接で一体化し、所望の寸法に仕上げます。

  • 寸法の自由度が高い
    用途に合わせて高さやフランジ幅、板厚などを自在に設定できます。大スパンの梁や特殊な荷重条件を満たすために、断面寸法を細かく調整したい場合に重宝します。
  • 強度設計が柔軟
    必要な部分のみ板厚を増やすなど、断面を細かく調整しやすいです。同じ重量でも必要強度をピンポイントに確保でき、材料を無駄なく使えます。
  • 溶接コストや手間が増える
    プレートを組み立てて溶接する工程が欠かせません。製造コストや納期に影響が出る場合があるため、プロジェクトスケジュールや予算と相談が必要です。
  • 寸法や品質管理が重要
    板厚や溶接状態を正確に管理しないと、強度ムラや溶接欠陥が生じる恐れがあります。品質面では高い製造管理体制が欠かせません。

ロールH鋼の特徴

ロールH鋼は、高温状態のスラブを連続して圧延(ロール)しながらH形断面に成型したものです。

一般に「熱間圧延H形鋼」と呼ばれ、JIS規格によって寸法や強度区分が標準化されています。

  • 大量生産による安定供給
    規格化されたサイズが量産されているため、流通在庫が豊富で入手しやすいのが利点です。建築や土木など、多様な現場で幅広く活用されています。
  • 製造コストが比較的低い
    溶接工程が不要で、一定の圧延ラインで連続生産するため、コストパフォーマンスが高いです。大型構造から小規模な建築まで、経済的に採用しやすいのも魅力です。
  • 寸法バリエーションに制限がある
    JIS規格で定められたサイズしか量産されないため、細かな寸法調整には対応しづらい面があります。特殊断面や大きな板厚が必要な場合はビルドH鋼を検討することが多いです。
  • 品質が均一で信頼性が高い
    圧延工程で一体成型するため、溶接欠陥のリスクがなく、全体的に均質な材料特性を得やすいです。

ビルドH鋼とロールH鋼の比較表

項目ビルドH鋼ロールH鋼
製造方法プレートを切断・溶接してH形断面に組み立て高温圧延でH形断面に一体成形
寸法自由度高い。高さ・フランジ幅・板厚を細かく設定可能規格サイズのみ。細かな寸法変更は難しい
強度特性必要に応じて局部的に板厚増加。設計に柔軟性がある溶接継ぎ目がなく、均質な圧延材で安定した性能
主な用途特殊寸法、大スパンや特殊荷重対応の梁や柱など一般建築、土木構造など幅広い現場で標準的に使用
コスト溶接工数が多く、製造コストが上昇しやすい大量生産され流通が多く、比較的安価

選定のポイント

  1. 荷重条件
    特殊な荷重分布や大きな応力集中がある場合、局部的に断面を強化できるビルドH鋼が有利です。通常の柱・梁程度ならロールH鋼でも十分対応できます。
  2. 寸法要求
    標準寸法内に収まる範囲ならロールH鋼が経済的です。規格外の大断面や特殊寸法が必要な場合はビルドH鋼を検討します。
  3. 品質管理
    大量生産されたロールH鋼は製品精度が安定しています。ビルドH鋼は製造段階での溶接品質や歪み管理が要となるため、工場選定や検査体制が重要です。
  4. コストと工期
    ロールH鋼は一般的に割安で短納期です。一方、ビルドH鋼は溶接工程が加わるためコスト増や納期延長の可能性がありますが、用途に合致すれば材料を無駄なく使え、全体コストで優位になる場合もあります。

Q&A

Q1: ビルドH鋼とロールH鋼は強度に大きな違いがあるのでしょうか?
A1: 材質自体に大きな差はありませんが、ビルドH鋼は溶接部の品質が安定していれば部分的に強化可能です。ロールH鋼は一体成型で均質な性能を持つ点がメリットです。

Q2: 大スパンの屋根梁にはどちらを使うべきですか?
A2: 荷重条件や寸法要求によります。規格サイズで対応できるならロールH鋼で十分ですが、より大きな断面や特定箇所の強化が必要ならビルドH鋼を検討します。

Q3: メンテナンス性に違いはありますか?
A3: 基本的には同様ですが、ビルドH鋼は溶接部の定期点検が必要です。ロールH鋼は表面の防錆や塗装維持に集中すればよいでしょう。

Q4: コストを最優先する場合はどちらが適していますか?
A4: 一般的にはロールH鋼が安価で流通在庫も豊富です。ただし、大断面や規格外の寸法に無理して合わせようとするとかえって割高になる場合もあります。

Q5: 溶接長さが長いビルドH鋼は歪みが心配ですが対策はありますか?
A5: 連続溶接では歪みが生じやすいです。溶接順序を最適化したり、交互溶接を行ったりして熱変形を抑制する技術が活用されます。

まとめ

ビルドH鋼とロールH鋼は、いずれもH形断面でありながら、製造方法や寸法自由度、コスト特性が異なるため使い分けが大切です。

一般的な構造にはロールH鋼が経済的に適しており、大規模な流通在庫も確保されているのでスムーズに導入できます。

一方、特殊荷重や大断面が必要な場合はビルドH鋼が有利で、必要な強度をピンポイントに設計できる柔軟性があります。

プロジェクトの条件を総合的に判断し、最適なH形鋼を選ぶことがポイントです。