垂直積雪量とは?特徴・評価方法・地域差について解説

垂直積雪量(すいちょくせきせつりょう)とは、建築物や構造物の設計において重要な指標の一つで、ある地点で垂直方向に積もる雪の体積や荷重の計算に用いられる積雪量を指します。

通常、積雪荷重(雪の重さ)を評価する際の基準として用いられます。


垂直積雪量の特徴

1. 実際の積雪厚との違い

  • 垂直積雪量は、地形や風、建築物の屋根形状などによって局所的に雪が偏る影響を排除した理論的な積雪量です。
  • 実際に地面や屋根に積もる雪の厚さではなく、雪が垂直に降り積もった場合の量を想定します。

2. 単位

  • 一般的に「mm」や「m」で表されますが、積雪荷重を計算する際には、積雪密度(kg/m³)と組み合わせて使用されます。

3. 積雪荷重との関係

  • 垂直積雪量をもとに、建築物に作用する積雪荷重を算出します。
  • 設計では、雪の密度(新雪や湿雪で異なる)を考慮して、垂直積雪量に荷重換算係数を掛けて計算します。

垂直積雪量の測定と評価

1. 基準としての使用

  • 垂直積雪量は、地域ごとの気象条件をもとに設定され、建築基準法や各種規格で使用されます。
  • 日本では「建築物荷重指針」などに基づき、特定の地域に適した設計荷重を導き出します。

2. 測定方法

  • 気象観測データや、地域ごとの過去の積雪記録をもとに算出されます。
  • 通常は50年から100年に一度の大雪を想定して基準値が設定されます。

垂直積雪量の影響

1. 建築設計

  • 垂直積雪量を基に、屋根や構造物に耐えられる設計荷重を算定します。
    • 平屋根や傾斜屋根では、雪が溜まりやすい部分に特別な強度設計が必要。
    • カーポートやビニールハウスの倒壊防止にも考慮される。

2. インフラの設計

  • 電線や鉄塔、橋梁などでは、積雪による荷重や断線リスクを評価する際に垂直積雪量が使用されます。

日本における垂直積雪量の地域差

日本は多雪地域と少雪地域が混在しており、地域ごとに異なる垂直積雪量が設定されています。

多雪地域

  • 北海道、東北地方、日本海側(新潟、富山、石川など)では、垂直積雪量が特に高く設定されています。
  • 基準値は2m以上に達することもあります。

少雪地域

  • 関東地方や太平洋側では、垂直積雪量が低く、設計荷重が軽減されることが一般的です。

垂直積雪量と積雪密度

積雪密度は、雪の種類や気温により異なり、垂直積雪量の荷重換算に影響を与えます。

雪の種類積雪密度(目安)
新雪50~100 kg/m³
しまり雪200~400 kg/m³
湿雪500 kg/m³以上

例えば、垂直積雪量が1mで積雪密度が300 kg/m³の場合、建物にかかる積雪荷重は300 kg/m²となります。


まとめ

垂直積雪量は、建築物やインフラ設計において雪害対策を考えるうえで欠かせない指標です。

積雪密度との組み合わせにより、実際の積雪荷重が算出され、建物や施設の強度設計に反映されます。